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糖尿病における心機能不全の新たなメカニズムの解明 研究活動 | 研究/産学官連携

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平成 24 年 10 月 10 日

糖尿病における心機能不全の新たなメカニズムの解明

名古屋大学大学院医学系研究科(研究科長・髙橋雅英)循環器内科学 坂東泰子

(ばんどうやすこ)講師、室原豊明(むろはらとよあき)教授らの研究チームは、

糖尿病により心不全が発症するメカニズムに心臓毛細血管不全が関与していること

を明らかにし、現在糖尿病治療薬として用いられている DPP4 阻害剤が、この心臓毛

細血管不全改善作用を介して、拡張不全を改善する可能性を見出しました。

高血圧や糖尿病という、数千万人規模の「国民病」の 30%以上に、拡張不全型心

不全は合併するといわれています。糖尿病の合併は心不全の増悪因子であることが知

られていますが、その機序は不明な点が多く残っています。このため、研究グループ

は、糖尿病合併症としての心不全に注目し、拡張不全の主因として、心臓栄養血管で

ある心臓毛細血管不全を仮説し、動物実験による検証を進めました。心臓毛細血管に

発現するセリンプロテアーゼ DPP4 の活性異常が、糖尿病を原因とする拡張不全心発

症の主因の一つであることを見出し、すでに糖尿病治療薬として市販されている

DPP4 阻害剤が、糖尿病に合併する拡張不全を改善することを動物モデルにおいて明

らかにしました。

本研究成果は、米国の科学雑誌『Circulation』(10 月 3 日付けの電子版、10 月9

日付けの印刷版)に掲載されました。

(2)

糖尿病における心機能不全の新たなメカニズムの解明

1.背景

超高齢化社会を迎え、高齢者に多く発症する心不全患者数は増加傾向を示しており、一旦 心不全症状が顕性化した場合、その後5年の生存率は一部の報告では30−50%と不良であり、 心不全悪化予防法の開発は医療費抑制の観点からも急務である。一般的に、心不全と認知さ れている病態は、収縮能が低下した収縮不全の状態であり、その前段階には、拡張不全性心 不全の病期が存在する(図1)。本研究では、拡張不全を制御するメカニズムに、心臓毛細血 管不全が関与していると仮説し、糖尿病モデルを用いてこれを検証した。また、糖尿病治療 薬 DPP4 阻害剤投与が、糖尿病合併症としての心不全発症を抑制しうるか、更に、DPP4 活性 のモニタリングが糖尿病及びそれ以外の原因による拡張不全心発症を予測しうるかを検証し た。

ポイント

○ 心臓は、収縮と拡張を繰り返し全身に血流を循環させるポンプとして機能する。

○ 心不全には、収縮が低下するために起こる収縮性心不全と、心臓の拡張が悪くなる拡張 性心不全とがある。

○ 拡張性心不全の主な原因は、高血圧や糖尿病や加齢であるが、そのメカニズムは不明な 点が多い。

○ 心臓毛細血管に発現するセリンプロテアーゼ DPP4 の活性異常が、糖尿病を原因とする 拡張性心不全発症の原因の一つであることを明らかにした。

○ 更に、現在糖尿病治療薬として用いられている DPP4 阻害剤が、この心臓毛細血管不全 改善作用を介して、拡張不全を改善する可能性を見出した。

○ 糖尿病以外の原因により生じた心不全に対して、DPP4 活性阻害は、異なる機序(イン クレチンホルモン増加作用)を介して、心機能を改善することも明らかにした。

(3)

2.研究の内容

本研究により、DPP4 の心臓における発現パターンが毛細血管特異的であることを明らかに した。動物モデルを用いて、心臓毛細血管内皮に発現するセリンプロテアーゼDPP4 の活性異 常が、糖尿病による拡張不全性心不全発症の一因であることを見出した。さらに、糖尿病以 外の原因として、血圧負荷による拡張不全に対するDPP4 阻害の影響も検証し、心臓毛細血管 不全のない病態では、インクレチンホルモン増加を介した異なる機序において、心機能を改 善することを報告した。また、拡張不全患者末梢静脈血中のDPP4 活性を測定し、心エコーに おける拡張機能の一部と相関することを明らかにした。

3.今後の展開

本研究の成果を臨床的に実践可能か否か検証する。心不全患者における糖尿病治療の重要 性を啓発する。

【論文名】

Dipeptidylpeptidase-4 Modulates Left-Ventricular Dysfunction in Chronic

Heart Failure via Angiogenesis-Dependent and -Independent Actions

※米国科学雑誌『Circulation』10 月 3 日号電子版、10 月 9 日号印刷版に掲載

参照

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